モノリス(monolith)とは、和訳すると「一枚岩」という意味で、オーストラリアのエアーズロック(ウルル)に代表されるような巨大な地形や岩石、建材、さらには人工物を表す言葉です。 材料科学の分野で「モノリス」といえば、材料骨格と空隙がそれぞれ三次元的につながった「共連続構造」を有する一塊の多孔質材料のことです。広義にはスポンジや海綿、さらにはゲル乾燥物もモノリスに含まれると考えることができますが、発泡スチロールのように閉じた穴(閉孔)が存在する材質は含みません。
モノリス骨格の直径はナノメートルからマイクロメートルオーダーと、髪の毛よりもずっと細いため、普通のスポンジと比較すると、モノリスには単位質量あたりの骨格表面積…比表面積が非常に高いという特徴があります。この高い比表面積と連続孔の存在を活用して、クロマトグラフィーカラムなどの分離分析材料として、また金属や酵素などの固定化触媒用マトリックス、微量物質の回収用担体などへの応用が期待されています。
一般的に、モノリスはミクロ相分離によって作られ、その作製法には、重合反応とともに相分離が進行する重合(反応)誘起相分離法(PIPS)、溶液の溶媒交換による非(貧)溶媒誘起相分離法(NIPS)、そして加熱・冷却により相分離を起こす熱誘起相分離法(TIPS)などがあります。
なお、モノリスには、シリカやガラスなどの無機系モノリスとポリマー系モノリスが存在します。このうちPIPS法によって作製されたシリカモノリスは古くから研究され、モノリスカラムがすでに市販されています。NIPS法を用いたポリマーの多孔質膜も、水処理用などに広く応用されています。
2007年に大阪大学 宇山研究室が、水-エタノール混合溶媒に対するポリメタクリル酸メチル(PMMA、アクリルガラス)の特異的溶解を見出し、さらにTIPS法によるモノリスの作製に成功しました。
このモノリスは溶媒を含んだ状態では、写真や動画のように柔らかく弾力性がありますが、乾燥状態ではPMMA本来の硬さを回復します。作製直後のモノリスの触感は、まるで濡れたマシュマロのようです。
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TIPSモノリスの相分離にともなう多孔構造発生は、温度変化をトリガーとした自発的かつ可逆的な現象であり、溶媒の環境負荷が低く、低コスト性・省エネルギー性に優れ、構造が比較的均一という様々な利点を有しています。また、加熱溶液を型に入れて冷却することで、任意の形状を有するモノリスを作製することができます。
これまで、様々な汎用ポリマーや機能性ポリマー、およびこれらの共重合体からなる、機能性を有したポリマーモノリスが開発されるとともに、作製法や作製条件を綿密に検討・工夫することにより、骨格径やモルフォロジーの制御が可能になるなど、幅広いシーズやノウハウが積み重ねられてきました。
弊社、合同会社 阪神モノリス研究所は、「モノリス」に関する各種シーズを社会や産業界が要請するニーズとマッチングさせ、新たな高機能性材料を生み出すために、2014年7月に設立されました。
現在、モノリスに関する応用研究と用途開発を、宇山研究室との産学連携により進めています。
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